中国人民元の切り下げ、ベトナムへの影響
中国は8月6日、人民元を再び切り下げ、元は米ドルに対してさらに0.1%下落した。1日前には1.5%切り下げられて、1ドル=7元のラインを突破していた。
■米中のはざまで揺れるベトナムの通貨政策
中国の切り下げと、米ドルの利下げで世界経済は予想しにくい動きとなっており、ベトナムの為替相場と金融政策にも影響を与えるだろう。
特にベトナムは“ドルペッグ制”を敷いているため、国際金融市場の動きに影響される。また、中国との貿易関係も強いため、通貨政策は簡単な問題ではないが、ベトナムドンの大きな切り下げは無いだろうというのが専門家の共通した見方だ。
フルブライトベトナム大学のNguyen Xuan Thanh氏によると、原則的に人民元の切り下げはベトナムドンへの圧力となり、国家銀行の介入の有無にかかわらず、市場からの影響を受ける。
過去を振り返ると、2018年4月から末までに人民元は9.4%下がっているが、ベトナムドンは3.5%しか下落していない。つまり国家銀行は、人民元の対米ドル安ほどには、ベトナムドンを切り下げない政策を採っている。
■ドンの為替はここ1年安定
「現在ベトナム当局は毎日少しずつ(ドンを)調整しており、主体的に切り下げしているのではなく、市場の状況に合わせて調整していると言える」
「全体的に見て、人民元が10ドン安くなっていたとすればベトナムドンは3ドンしか安くなっていない。こうすることで、ベトナム製品が中国製品に対して大きく競争力を削がれないようにしている」
「もし中国製品が大幅な通貨安によって有利になればベトナムに溢れてしまう。そのためベトナムドンを調整させてはいるが、米ドルに対してそう大きなものになっていない」とThanh氏は分析する。
またBVSC証券のアナリストは、ベトナムドンの対米ドル相場は7月末時点まで昨年末とほぼ同じ水準で推移しており、国家銀行は人民元の新しい動きに対して採り得る十分な余力があるとしている。
「人民元安の圧力があるかもしれないが、米国から為替操作国と認定されないよう、国家銀行は3%を超える切り下げはしないだろう」とBVSCは見ている。
国家金融監視委員会の元委員長Truong Van Phuoc氏は、低いインフレと安定した為替相場もあり、ベトナムには直接的にも間接的にも外国から資金が連続的に入っているため、米ドルの上昇圧力は強くない。外貨供給も潤沢であることから、今年の為替相場は比較的安定し、為替相場運営もスムーズにいくだろうと見ている。
■証券アナリストの予想
VietinBank証券(CTS)によると、中国は米国製品に対しこれ以上課税する余地がないことから、米国との貿易バランスを保つために人民元を切り下げた。ベトナムも中国と貿易関係が強いために影響を受ける。
同社は、為替相場について2つのシナリオを想定している。
米国が中国製品に対する課税を現行のまま維持すれば米ドルは7.13元程度となり、ベトナムドンの対米ドル相場は2万3,791ドンとなる。
もし、米国が合計5,400億ドルの中国製品に25%の課税をすれば、1ドル=7.58元、ベトナムドンの対ドル相場は2万4,565ドンとなる。
(Cafef.vn 8月7日)
(2019/11/12 08:05更新) |