HOTNAM!ベトナム最新情報 HOTNAM!トップ | ベトナムニューストップ ベトナムニュース 【The Watch】 ビジネス最新情報

トップ ニュース フォーラム 基礎データ 書店 生活情報 ディレクトリー
 ニュース検索
 ニュースカテゴリー
ニューストップ
政治・経済
投資・進出
日系企業情報
事件と出来事
統計情報
人事・法律・会計・労務
社会とトレンド
コラム
クローズアップ
インタビュー
 TheWatch ニュース
週4回(火・水・木・金)電子メールで最新ベトナムニュースを送付、日系進出企業の定番情報収集メディアとなっています。
定期購読(TheWatch)
 ベトナム関連書籍
ベトナム関係の書籍情報をさらにジャンル別などで細分化し、分かりやすくベトナム関連情報を紹介しているインターネット本屋さんです。
HOTNAM!ベトナム書店

コラム

街を“流し”て20年、ブンタウに響く歌声


 人の流れに逆らうように、70歳くらいの老夫婦がいた。

 盲目の夫はギターを抱え、バッテリーを担ぎ、唄う。妻は片手に夫を引く紐、そしてもう片手には、お金をもらう菅笠。1,000ドンでも、2,000ドンでも入れてくれる人があれば老婆は、「ありがとうございます。ありがとう」と忘れない。
通りを“流す”こと1日、夫婦はバスをつかまえて、70km先のBinh Thuan省はLa Giへ帰る。10万ドン(約5ドル)ぽっちの、喜びを抱えて。

 夫の名はNguyen Van So、妻の名はTran Thi Sua。夫婦がこうして“流し”て、もう20年になる。

■街に響く歌声

 肌を焦がすような陽射しだった。

 Vung Tau市11街区のPhuoc Thang市場へと流れる人のなかを夫婦は、唄いながらゆっくりと歩を進める。「夜の街に光が灯る……」感情のこもった翁の声が、古ぼけた小さなスピーカーから流れる。しかしどんなに声高らかに唄おうとも、行き交う車両の騒音に消える。

 その声に抑えきれず、バイクを引き返し、2万ドンを渡した。「ありがとう。本当にありがとう」老婆が顔を上げ、目を潤ませた。

 「どっから来たんです?」

 「家はLa Giなんですよ。朝3時にバスをつかまえて、旦那がVung Tauで唄うの」

 「歌って、毎日いくらの稼ぎに?」

 「多い時は10万ドン、少ない時は数万ドン。晴れてりゃいいけど、雨ならダメ」

 理解していない私を見て、Suaさんが付け加える。

 「雨なら、私たちは行けないの。旦那が目が見えなくて、のろいからね」

 「もうこの仕事は長いんで?」

 この問いにSuaさんは応えず、何か言いたげな眼差しを送ってから、振り返ってこう言った。

 「あんた、ちょっと休もうかね。この陽射しだし」

 老婆は夫を歩道の端に連れて行き、木陰の下で、話を始めた。

■病に消えた夢、夫を支えてあきらめた夢

 ふたりはもともと、Binh Thuan省La Giの出である。青春時代にSoさんは兵隊に憧れ、Suaさんは村の子供たちの先生になることを夢見ていた。
しかしその夢は、重病に消えた。元気溌剌の青年Soが、障害を抱えたのである。

 もう二度と光を見ることはできない。そう知ったSoは、ただ死にたいばかりだった。そんな彼を愛するがあまりSuaは、教師になる夢をしまって、Soと結婚した。

 「生活は苦しいよ。家は、タンロン畑(ドラゴンフルーツ)の側の掘っ立て小屋、あの人は目が見えないから、何でも私がやってあげなきゃならない。でもこの人に好かれちゃってね」Suaさんが言う。

 子供について聞くと、「息子が2人。やっぱり貧しい。私たち年寄りじゃ、何も助けてあげらんない。こうやって唄って歩くのは大変だけど、でも自分の面倒は自分で見ないと。もうこの仕事が染み付いちゃったわよ。20年もやってるんだもの。聴いてくれるのは、年寄りや物好きな人だけね。お金をくれるのは、私たちをかわいそうに思って。“路上の歌手”だなんて呼んでくれる人もいたよ」。

■人生を、最期まで唄う

 “流し”て20年、SoさんとSuaさんには、嬉しいことも、悲しいことも、たくさんあった。

 どれほどのサンダルを履きつぶしたか、どれほどの道を通り過ぎたかは覚えてないが、お金をくれた人たちの、心だけは忘れない。

 3年前、夫婦は宝くじを売りながら、歌をうたっていた。だが、宝くじを買う振りをして、全て盗まれたことがあった。盲目の夫は道すら見えず、妻は雨の中を涙に暮れた。「その時から、宝くじ売りはやめたの。販売店の宝くじのお金は、2カ月近く唄ってようやく返したわ」Suaさんが言う。

 Soさんは、“世界”が見えない。だが自分の歌で、誰かを喜ばせたり、誰かの悲しみを癒せたりしていることは、感じられる。

 Soさんが左手を見せる。

 「ごつごつしてんだろ。弦をビシッと押さえるからな。唄い始めれば、自分がその歌に入り込んだようでね。誰かを喜ばせられればいいなって。お客さんは、心ある人、年寄り、あとは子供達だ」。

 1日に唄う時間は、「Binh Thuanを朝3時に出て、人がいるところならどこでも唄う。居酒屋でも、喫茶店でも。この人が疲れちゃったときは、私も唄うの。20年この仕事で生きてきて、そりゃ生活のためってこともあるけど、でも自分の歌への思いを満たすためでもあるよ。もうこのギターとも20年の付き合い。オンボロになっちゃったけど、捨てらんない。唄い始めたときからの、親友だからね。流しはそりゃつらいよ。でも歌い始めれば、憂さも晴れるって」とSuaさん。

 歌をうたって人生を終える?

 「もちろんよ。力がある限り、唄う。人に唄って聴かせるのも、自分の人生に歌ってあげるようなもんだから」Suaさんが言う。

 週末の午後、人が行き交うVung Tauの街に、枯れた歌声が響く。

 「人生を生きるには、心が必要さ。何でかってわかるかい?」

(Tin Tuc)


※『ベトナムニュース The Watch』のご案内※

 ベトナムニュース The Watch は、ベトナムに投資・進出する日系企業の定番ビジネスニュースです。

 当社はEメール配信による速効性(週6回)、週報(ベトナム国内のみ)による情報の保存性を重視し、各進出日系企業及びベトナム進出を検討されている企業の皆様の業務に役立つ本格的な情報提供を行っております。

 詳細は『ベトナムニュース The Watch』(http://www.thewatch.com/)をご覧下さい。

(2012/11/03 01:26更新)

※上記の情報は【ベトナム最新情報】より引用しています。

『ベトナム最新情報』は、ベトナムに投資・進出する日系企業の定番ビジネスニュースです。
詳細は『ベトナム最新情報』をご覧下さい。

ベトナムニュースヘッドライン

[クローズアップベトナム最新情報5084号 目次(07/20)
[コラム 日本人が起業したKAMEREO、ベトナム飲食業界の未来に貢献(07/20)
[日系企業情報日本のイオンが「ベトナムウィーク」、ベトナム産果物を輸入販売(07/19)
[コラムスマートホーム市場、無限の潜在性(07/14)
[日系企業情報日本製品販売チェーン、「PANPAN」が人気(07/13)

HOTNAM!トップ > ベトナムニュース > コラム > 街を“流し”て20年、ブンタウに響く歌声 
トップ ニュース フォーラム 基礎データ 書店 生活情報 ディレクトリー

広告掲載 - お問い合せ - 利用規約 - プライバシーポリシー
©1999-2021 HOTNAM! All rights reserved.