ベトナム:ブレークスルー思考でトップを目指すDong Tam社
Dong Tam社は創業1969年、タイルメーカーとしてスタートした。それから38年が経った今では、様々な製品を手掛ける大企業へと変貌した。その影には、他でもないVo Quoc Thang社長の姿がある。
その彼に大きな転機が訪れたのは「桜の国」への出張だった。日本到着後、気軽に電話するよう言われていた大学教員の友人に電話をかけたが全く出ない。午後になりやっと電話がきて、気づいていたが勤務中で出られなかったと告げられた。
日本では勤務時間は仕事のためだけのものと考えられており、電話に出てベトナム語で話せば、周囲に仕事以外のことをしていると思われてしまうということだった。
企業見学に参加した際、見学地に到着し客が降りるたびに、ガイドが車内を歩き回り、ペットボトルを集め外のゴミ箱に捨てに行く姿に目を見張った。どうしてゴミ拾いをしているのか尋ねると彼女は、公共の場所でゴミを捨てることは許されず、規定の場所に捨てなければならないからだと答えた。
これらの出来事は彼に大きな衝撃を与え、頭から離れなくなった。そして工場の見学で、美しい施設、整理整頓された道具にまた驚き、桜の国は決定的に彼にとって興味の尽きない対象になった。
昨年1月、マネジメント能力の向上に関する研修に参加し、ブレークスルー思考で有名な日比野省三教授に出会い、革新的な考えに引き込まれた。研修を終えたThang社長は日比野教授にLong An省の省機関や企業向けの講演を依頼し、ほどなく実現した。
「Long An省がホーチミン市の発展に追いつくにはどうしたらいいのか」そんな参加者の質問に教授は、「『追いつくことなど無理』そう考えているなら永遠に発展はない」と答えた。
教授の話を聞いたThang社長は、ブレークスルーの実行を決め、マネジメントシステムの見直しを進めた。目標は2010年以降、Dong Tam社の社員の平均所得を国内の生産・販売業界の企業でトップ10入りさせることだ。
発展に向け生産や企業管理、企業文化の専門家を招いたり、幹部を日本、タイ、イタリア、スペインなどへ送る研修制度を設けるなど、人材育成に年間およそ20億ドン(約12万5,000ドル)をかけている。
昨年4月、Dong Tamグループは6社を統合・買収し新たに3,300人の従業員を迎えた。当面は建設資材、内装分野で国内トップを目指し、他分野へも進出できるようシステム全体の基盤作りを進める。長期的には、工業団地や住宅区などの不動産分野への投資も視野にいれている。
Thang社長は、大組織を管理するには、▽明白で公平な管理・経営、▽顧客に最大の利益・付加価値を還元するための研究・革新、▽社会貢献を経営哲学としなければならないと話す。
Thang社長は、全ての社員には、会社を家庭だと思い、心地よく働いて欲しいと考えている。こうした環境があってこそ、一人ひとりが創造力を発揮し全力を尽くすことができるからだ。
また会社では、担当部署で問題が解決されない場合、社長や社長秘書にe-mail、携帯メッセージもしくは電話で直接連絡できるという規定を設けている。さらに特徴的なのは「整理、整頓、清潔、清掃、しつけ」という5Sを全社で徹底していることだ。
再編成からまだ日は浅いが、人事管理のシステム化、合理化により、コスト削減や営業効率アップという成果が見え始めている。Thang社長は、初期の成長は非常に重要な意味を持つと自信を見せる。
(Nguoi Lao Dong)
(2008/06/05 04:01更新) |