ベトナムの国家財政が黒字に、理由と今後の課題
2019年上半期、国家財政は80兆ドン(約4,000億円)近くの黒字となっている。財政赤字のやり繰りに長年悩んできた政府にとって、これは朗報と言えるだろう。
国家財政が黒字転換した理由は、歳入の伸びが歳出の増加より大きかったためで、2018年同期と比較して歳入が13.2%伸び、歳出の増加を2.6%に抑えたことによる。
これは2019年上半期の状況であるが、ベトナムの財政政策に非常に有意義な結果といえる。債務圧力が軽減され、国家銀行は低コストで国債が発行できる。国債発行量はまだ45%程度にしか達しておらず、利回りは1ポイント程度下落、償還期限は長期化している。
■歳入増の要因
歳入が伸びたことには、主に2つの要因がある。
(i)国内税収が安定的にプラス成長を維持している。企業からの収入が伸びる一方で、土地からの収入は低下している。
(ii)輸出入からの収入が、2018年同期比で13.7%と大きく伸びた。これは、自由貿易協定(FTA)で大きな減税を強いられるなかでのトレンドに反する動きに見える。前年同期比で輸入品の付加価値税収は15.7%、特別消費税収は135%伸びている。
特別消費税収の大きな伸びは、自動車輸入量が前年同期比で5倍に伸びたためで、上半期の輸入は7万5,000台、輸入額17億ドル、台数で515.8%、金額で417.3%伸びた。
■実態は瞬間黒字、インフラ整備に遅れ
国家財政が黒字になっても、喜ぶのはまだ早いかもしれない。持続的な歳入増を目指キためには、自動車輸入などではなく、企業の事業活動を主な収入源にしなければならない。
今年の自動車輸入急増の背景には、前年同期は手続き問題でほぼ輸入がストップしていたことがあり、来年このような急増が無いことはほぼ確実だ。
しかし、この財政黒字の一番の懸念は、これが資金吸収力の弱さに起因するという点だ。統計総局によると、インフラ投資向け歳出は年間計画の44.9%で前年同期比3.9%しか伸びていない。これは、2015年以降で最低の伸び率となっている。
昨年同期のこの歳出も、計画の43.3%と非常に低かったことにも言及しなければならない。
歳出が少ないのは、需要が無いわけでなく、手続きやその他様々な内的要因による資金吸収力の低さが原因である。
電源開発や高速道路、都市鉄道、病院、学校、農業農村などの大型プロジェクトが軒並み遅れており、すでに10年を費やしながら、資金不足でいつ終わるかわからない案件もある。現時点では、国庫には資金があるにも関わらずにだ。
これらはいずれも、国家にとって非常に重要なインフラ施設であり、その遅れは確実に経済成長の足を引っ張る事になる。
■産業界の国内調達率を上げることが急務
ベトナム自動車メーカー協会(VAMA)によると、2019年上半期の新車販売台数は15万4,273台で前年同期比21.2%増(2万7,073台増)となった。
しかし、輸入車の急増に対し、上半期の国内生産車販売台数は9万1,731台で、前年同期比14%減少している。つまり、輸入車の方が国内生産車より競争力があるということだ。
輸入車と国内生産車の品質が同じと仮定すると、この結果につながった理由は価格にあるといえる。
ベトナム自動車産業のバリューチェーンでは現在、メーカーが生産原価を下げるための重要な裾野産業が欠けている。ベトナムで活動する自動車メーカーには生産会社も組立会社もあるが、原材料、部品、機械設備はほぼ全て外国から輸入している。
つまり、この産業向けの裾野企業という重要な供給先が不充分で、タイやインドネシアの自動車産業の底の厚い国々に敵わない、ベトナムにとっての大きな弱点となっている。
(Thoi Bao Kinh Te Sai Gon 8月1日,P.11)
(2019/11/10 06:08更新) |