コーヒーチェーンで外資は苦戦、国内企業は善戦し海外進出
業務の縮小やベトナム市場からの撤退を余儀無くされている外資系コーヒーチェーンが少なくない中、国内コーヒーチェーンはそのシェアを拡大し、中には海外進出を図るベトナム企業もある。
■外資系チェーンの現状
7年前、ホーチミン市1区のPhu Dong通りにスターバックスコーヒーが登場した日のことは、まだ市民の記憶には新しいだろう。オープン当初、多くの客が長蛇の列を作っていたのが懐かしい。
スターバックスのオープンから程なく、Coffee Beneが進出し、ここでも若者たちが長蛇の列を作り、キムチの国から参入してきたコーヒーがどんなものなのかを楽しんでいた。
海外のフランチャイズに関する専門家は、ベトナムは人口が若く、能動的で、新しいものを好み、国際的な雰囲気があることが、海外の飲料、食品ブランドチェーンがベトナムに投資を計画する理由だと分析する。
しかし、こうした有名チェーンが進出を始めた頃とは様子が一変し、現在、一部の外資系コーヒーチェーン店の客入りがめっきり減ってきている。また、一部の企業は規模の縮小、戦略の変更、市場からの撤退などを余儀無くされている。
例えば、Coffee Beneは5年間で300店舗展開を目標にしていた。しかし、それから1年も経たずして、この目標は100店舗に下方修正され、現在の実店舗数はさらに少ない数に留まっている。
注目点としては、進出初期とは異なり、Coffee Beneの店舗は市内中心部の一等地ではなく、郊外やショッピングセンターのフードコートの一角や韓国人が多く住む地域に店舗を展開するようになってきたことだ。
ベトナムCoffee Beneチェーンの代表によると、国内のコーヒー市場は好まれる味も一定ではなく、多くの大手コーヒーチェーンが同じ舞台でしのぎを削っているという。店舗展開のためのテナント確保もかなり難しく、同コーヒーチェーンは計画をより合理的に調整したという。
また、他の外資系コーヒーチェーンであるGloria Jean’s Coffeeも様々な問題を抱えていた。
2012年、Dong Khoi通りに店を構えていたGloria Jean’s Coffeeは、店舗の賃貸料金があまりにも高額なことから、閉店を余儀なくされた。2016年、同店はホーチミン市内に2店舗を展開していたが、2017年には、同ブランドは同市場から完全に撤退してしまった。
ベトナムGloria Jean’s Coffeeの最後のオーナーは、同ブランドは特殊なベトナムのコーヒー市場の研究・計画が甘く、ベトナム市場からの撤退を余儀無くされたと振り返った。
Gloria Jean’s Coffeeの前に、シンガポールのSUTLグループによって展開されてきた、欧米スタイルのコーヒーとデザートを売りにしていたNYDCも、7年間のベトナムでの奮闘の末、ベトナムの顧客に別れの言葉を告げる結果となった。
ベトナムで最初にGloria Jean’s Coffeeを出店した人物で、現在はフランチャイズ専門家のNguyen Phi Van氏は「世界的に有名なブランドは、その進出における原則を応用するだけですが、一部の国や地域だけで認知されているブランドは少し状況が違います」と分析する。
発展のためには、チェーン店は独自の要素と、進出国や地域に合わせた要素の二つをうまく組み合わせて展開していかなければならない。
スターバックスは、市場参入から多くの年数をかけて、50店まで店舗数を増やし、それぞれの店舗は独自のスタイルを持ち、ある店舗はファミリー層をターゲットに、ある店舗はビジネスマンをターゲットに、またある店舗は若年層をターゲットにするなど、それぞれの店舗が独自の店舗作りを展開している。
しかし、多くのブランドでは、フランチャイズマニュアルがあることで、市場のニーズの移り変わりに追いつくことェできていない。
一方、一部のブランドは、そのブランドの核となる要素は残すが、それ以外の要素については各店舗に任せるといった柔軟な契約を結ぶところもあるが、フランチャイズ権を購入するオーナーたちは、失敗や間違いを恐れるあまり、親会社の持つ既存の経営方法を取り入れ、保守的な運営に終始することで失敗するケースが多いようだ。
さらに注意が必要なのは、一部の外資系コーヒーチェーンは、彼らの国では認知度が高く、ターゲットとする客層は中間層である。
しかし、こうしたブランドがベトナム市場に参入してくると、ほとんどのブランドが高所得者層、ビジネスマンなどをターゲットにしているため、コーヒー1杯の値段は国内のカフェが提供するコーヒー価格の2~3倍になるのは珍しくない。
国内にはこうした客層はまだ多くないため、彼らはセルフサービス方式よりも、フルサービスを好むという特徴もある。
■国内ブランドの発展
外資とは対照的に、国内コーヒーブランドは順調に発展を続けており、外国チェーンが撤退した跡地にも新規店舗をオープンさせている。
Gloria Jean’s Coffeeの最後の2店鋪のうちの一つがCon Rua湖のロータリーに出店していたが、現在はHighlands Coffeeが入っている。
ハノイやホーチミン市のほとんどの大型ショッピングセンターにあり、市内一等地では、野外に店を構えるなどして、Highlands Coffeeは、国内で最も成長しているコーヒーチェーンで、会社員から若者まで、多くの客層の集客に成功したカフェの一つだと評価されている。
また、Phuc Long、The Coffee House、Passio Coffee、Cong Ca Pheなどの国内コーヒーブランドも、ビジネスにおける柔軟性と、店舗にかかる賃料を最大限抑えることでそれぞれ成功を納めている。
Phuc Longは多様な商品と競争力のある価格、そして立地で、多くの若者を呼び込んでおり、Coffee Houseは若者好みのオシャレで印象的な店構えと若者をターゲットにした価格設定で他店と競い合っている。
ここ最近の市場動向として興味深いのは、コーヒー輸出専門の企業が新しいコーヒーチェーンを展開し始めている。
Phuc sinh社のPhan Minh Thong社長は、同社が手がけるK Coffeeは国内市場に参入し、さらに難しいと言われているヨーロッパ市場への進出も果たしている。ケーキなど豊富なメニューをK Coffeeチェーン店に導入し、同社の今年の目標はベトナムにおける30店舗の新規オープンで、現在はフランチャイズ方式で投資家の取り組みを図っている。
同様に、輸出企業のTNI社も、昨年半ば、Gia Lai省にKing Coffeeをオープンさせ、コーヒー市場への進出を果たした。その後、同コーヒーチェーンはホーチミン市とハノイを中心に店舗数の拡大をしている。
一方、食品を扱うNutifoodもベトナム観光大使のGreg Norman氏と協力し、ベトナム及び海外に展開するコーヒーチェーン合弁企業を設立し、Greg Norman NutiCafeコーヒー製品を販売する。一号店はホーチミン市中心部にオープン予定で、幅広い層をターゲットにするという。
コーヒービジネス市場への参入について各企業は、市場には非衛生的で、安全が保障されていていない製品が広く出回っていることから、コーヒー市場にはまだまだ潜在力があると分析している。
しかし、Thong氏は「国内市場におけるコーヒービジネスは決して簡単ではありません。何より、消費者が好むコーヒーの味というのはそう簡単に変わるものではありません」と話す。同社長は、K-Coffeeチェーンは参入から5年で投資資金を回収できると信じている。
(Thoi Bao Kinh Te Sai Gon 4月25日,P.2)
(2019/08/09 02:51更新) |