優秀なベトナム人材が不足する可能性 ~労働傷病兵社会福祉省次官インタビュー~
日本の国会で、2019年4月に施行予定の外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法が成立した。これにより、ベトナムを含む各国から14分野数十万人の熟練労働者が、長期労働のため日本に渡ると見られる。
この法案が、ベトナム国内の人材確保および長期的な人材育成問題に与える影響について、労働傷病兵社会福祉省Doan Mau Diep次官に話を聞いた。
■長期的な視点で優秀な人材を確保
Q: 日本が熟練した外国人労働者の受け入れを拡大することは、ベトナムの労働者にとってチャンスだという意見が多くありますが、どう思われますか?
A: 日本政府が国内の需要により、外国人労働者の受け入れを拡大するのは良いと思います。日本は、労働輸出を行う国に向けて、日本の発展状況や労働・雇用問題におけるメッセージも発信しています。労働者不足は、多くの国、特にベトナムのように高齢化が始まりつつある国への問題提起でもあるのです。われわれは将来の労働力確保について、慎重に考える必要があります。
Q: つまり、日本の新たな政策により、ベトナムで人材が不足するということですか?
A: 現在はベトナムでの求人枠は少ないかもしれませんが、将来的には、専門性の高い労働者を確保することが必ず必要になります。
日本では多くの企業が人材不足で倒産していると聞きました。中国でも労働者の出稼ぎで貧困に陥った地域があります。多くの都市で、労働力不足によりゴーストタウン化している事実を教訓にしなければなりません。
ベトナムでも、都市部への出稼ぎは農村部に多くの問題を残しています。多くの地域で、働き盛りの若者が不足しているのです。今の日本のように、10~15年先のベトナムでも労働者不足の問題が起きるかもしれません。
■労働輸出の抜本的見直しが必要
Q: 海外で働く労働者の数は増え続けており、昨年は13万4,000人が海外に出ました。この人数に関して、何かご意見はありますか?
A: 労働輸出自体を見直す必要があると思います。多くの人が、海外に優秀な人材が流出することを問題視しています。どの程度、労働輸出を行うのかが問題です。
毎年120万人が新たな労働力として就業を開始しますが、40万人が定年退職していきます。残る80万人の中から、30~40万人もしくはそれ以上を海外に行かせたらどうなるでしょうか。
優秀な労働者が全て海外に出てしまうと、国を発展させるための人材が国内に残りません。優秀な人材、熟練した労働者がいなくなれば、ベトナムが中・高所得国入りするという希望は実現できないでしょう。
Q: 日本など海外で働くことを望む労働者の希望を叶えながらも、ベトナムにおける人材を確保するために何をすべきでしょうか?
A: すでに言及したように、日本が内需のために門戸を開くことは良いことです。ベトナムでは常に労働輸出企業が、労働者送り出しの準備を行っています。
しかし、ベトナムでも熟練労働者を必要としているため、労働輸出企業には、有利かどうかだけでなく、多面的に判断してほしいと思います。実際に企業は、熟練労働者の採用が難しいと嘆いています。
そのため、長期的な視点で労働輸出を検討する必要があります。毎年30万~40万人を労働輸出することは期待できません。今年の労働輸出は目標の14万人に達すると予想されていますが、今後は年間2万~3万人の増加が妥当でしょう。
■優秀な人材を引き留める方法を模索すべき
Son Nero社のHoang Van Hung社長は、日本への出張時に学んだ優秀な人材の引き留め方について意見を述べた。
「日本で短期間の研修を受け、技能を習得したベトナム人従業員は、積極的で規律ある勤務態度になりました。しかしベトナムでは、一般的に研修や職業訓練がなく、上手く技術を習得できません。こうした状況を改善し、労働者の才能を開花させるために重要なことは、良い労働環境を整え、彼らの成長を支えていくことです」と言う。
従業員は、自分が尊重されていると感じれば、長く企業で働くことができると話す。
■日本の技能実習の魅力は高い給与水準
海外労働管理局の統計によると、日本で働くベトナム人技能実習生は現在13万人以上おり、主に、建築、機械、食品加工、電子、介護、縫製などの分野で働いている。
かつては労働者の給料は月400万~500万ドン(約20万~25万円)で、生活費などを差し引いても、残り200万ドン(約10万円)を家族に送金することができた。そのため多くのベトナム人労働者は、日本で働けるチャンスに集まったという。
(Phap Luat 12月14日,P.11)
(2019/03/23 03:50更新) |