ドン切り下げで信頼強化、電力・石油は値上げ必要
― EuroCham・Executive Directorインタビュー ―
欧州商工会議所(EuroCham)のExecutive Director・Matthias Duhn氏に、ベトナムのインフレや切り下げについて話を聞いた。
Q: ベトナムのインフレとドン切り下げをどう見ていますか?
A: 経済が成長する時にはインフレリスクに直面します。これは、ベトナム政府の試練のひとつです。先日のドン9.3%切り下げはかなり強い切り下げで、米ドルに対するドンの実際の価値により近づけるものです。このことでビジネス界の信頼は増すでしょう。これはこの数年で最も強い切り下げだからです。ドンを大きく調整するほうが、小刻みにするより良いと思います。
この切り下げにより、外為市場が落ち着くことを期待しています。一部には、今年は1回の切り下げだけでなく、別に行われる可能性があるとの声がありますが、今回のドン切り下げは合理的なステップで、これが2011年のマクロ安定に信頼を増すことになると思います。
ドン切り下げは為替相場に影響し、輸入品は高くなり、輸出品は安くなります。そのためドン切り下げで、商品を輸入している企業では商品価格の値上げ圧力が増します。しかしドンの切り下げは輸出を増やし、2011年の成長を後押しします。
Q: 根本からのインフレ抑制は長期的な取り組みとなりますが、当面講じるべき価格抑制策は?
A: ベトナムのインフレを解決するには多数の対策が必要で、難しい問題です。このなかで通貨切り下げは小さな対策でしかありません。問題は、高いインフレを引き起こしている要素を根元から解決することで、価格統制や行政的、非市場的な切り下げといった短期的な対策ではありません。
政策策定者は、インフレを引き起こしている原因を検討して、税制度、行政的な規定、小売市場といった要素を「解剖」していくべきです。低水準に価格を抑制していく努力は、世界のあらゆる国で長期的には効果的でありません。そのため、価格管理に関する財務省通達122号は早期に、今年または来年にもより効果的な別の形に変わるでしょう。
EuroChamでは幾度となく、そしていまでも、行政的な対策で解決するのではなく、例えば投資環境の改善、小売システムの改善、行政コストの削減、明白なビジネス環境の整備といった根本的な対策を行っていくべきだという観点を変えていません。
例えば現在よく見られるのが、ホーチミン市である商品を25万ドン(約13ドル)で購入したものの、別の店に行けば同じものが10万ドン(約5ドル)で手に入るといったことがあります。商品の価格が販売者に大きく依存しているのです。彼らは自由に売値を上げられますが、卸業者とそれを使う人に利益はなく、小売業者が大きな利益を得ています。広告コストの削減もインフレ抑制策のひとつです。広告コストを減らすことでメーカーは販売価格を下げられます。このやり方で小売業者もコストを削減でき、そこから販売価格を下げられます。
Q: 今年、電気料金と石油価格は引上げられる見込みですが、在ベトナムの欧州企業にどのような影響が?
A: ベトナムの電気料金は、地域諸国より非常に低い水準にあり、徐々に上げていく必要があります。現在の水準はあまりにも低すぎるもので、電力分野が引き続き活動、発展することができません。また同時に、外国投資家がこの分野に参入できないようにもなっています。この分野の供給力をあげるためには今、電気料金を上げるほかありません。
電気料金の引上げで一部商品は値上がりするでしょうが、長期的に見て電気料金はあまりにも強く抑えられており、段階的な引上げの一歩を踏み出さなければなりません。この分野への投資は、経済の生産活動に供給する電力を確保するために、今からやらなければなりません。
同様に石油価格もかなり長く抑えられているため適切な調整が必要です。消費者、また企業も段階的な調整に次第に慣れていくでしょう。この2つの品目は、世界、また地域と同程度の価格水準にしていく必要があります。
(Thoi Bao Kinh Te Viet Nam)
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(2011/02/22 02:16更新) |