設立以来利益なしのPacific航空、存続の理由
1991年の設立から、Jetstar Pacific航空(設立当時はPacific航空)で利益が出た年はない。2008年には5,460億ドン(約2,874万ドル)の損失を出し、自己資本はマイナス1,210億ドン(約637万ドル)となっている。2005年に同航空は、財務省により構造再編がなされているにもかかわらずだ。
多数の「歴史的な負の遺産」から、同航空の財務状況の困難は変わっていない。そのため国会議員からはVu Van Ninh財務大臣に対し、「なぜJetstar Pacific航空を破産法に基づき倒産させないのか」という疑問も出ている。
財務省の資料によると、構造再編を行った時点で同航空は決済能力を失っており、倒産の危機に直面していた。累計損失額は3,600億ドン、清算できない債務が3,400億ドン、自己資本はマイナス3,200億ドンとなっていた。
「活動から15年近く経った時点で、Jetstar Pacific航空は連続的に損失を出しており、翌年の損失が前年を上回るようになっている。自己資本も守られるどころか失われており、破産法に照らして、同航空や他の総公社は倒産させるべき。なぜ財務省はそうしなかったのか」と国会常任委員会のLe Quang Binh委員は疑問を投げかける。
これに対しNinh大臣は、「このような財務状況では、本来は倒産させなければならならなかった」と認める。しかし2005年にそれを行わなかった背景には、格安航空会社を生み、航空市場の競争度を高めたいという政府の思惑があった。
またNinh大臣によると、利益が出た年はないが、15年の活動で、市場でブランドを確立しており、そのため資産全体の再評価を進めた際に同航空は1億6,600万ドルと評価された。「オーストラリアのQantas航空がその価値を受け入れ、4,500万ドルを出資し27%の株式を保有することで、戦略株主となることを決めた。再編せず倒産させていれば、国は1億6,600万ドルを失うことになった」とNinh大臣は説明する。
「だが問題は、Jetstar Pacific航空が再編後も、引き続き損を出したことだ。2008年の燃油ヘッジングだけで、同航空の損失は3,100万ドルに達する。そのためこの航空会社をどう処理するのかという問題は、今も残っている」とNguyen Van Tuyet議員は指摘する。
Ninh大臣によると2008年には世界の多くの航空会社が、燃油の高騰で損失を出した。「2008年第3四半期末の時点で世界の経済専門家は、2008年7月に原油価格が1バレル140ドルをつけた後、原油価格が180ドルにまで上昇し、200ドル到達もあり得ると予想していた。この状況から同航空ではヘッジングを行った。これは航空業界では普通の業務だが、価格が逆に動くことを予見できず、3,100万ドルの損失が出た」とNinh氏は説明する。
大臣の説明によると、この3,100万ドルの損失を含めなければ、同航空の財務状況はさほど困難な状態でなく、2009年の一時期と2010年3カ月の時点では利益が出ている。2008年に同航空では人件費25%を削減、2009年にさらに50%進めるなどしているからだ。2010年も財務省は、同航空の国有資本の所有主である国営資本投資総公社に対し、Qantas航空側と協議して、さらなるコスト削減を指導する予定だという。
航空機1機から始まった同航空は、現在では6機を所有し、国内航空シェアの20%を持つ。年間利用者は190万~200万人だ。「Jetstar Pacific航空の財務状況はかなり改善され、発展の展望も明るくなっている。最近Qantas航空はベトナム政府に対し、同航空が困難を乗り切るための引き続きの協力と投資を約束した」とNinh大臣は話す。
「では、引き続き損失を出した場合は」という議員の問いにNinh大臣は、政府にこの格安航空会社の清算を提案するとし、「国営資本投資総公社の国有資本引上げに高値を出す準備がある投資家は多数いる。Qantas航空も、同航空の持ち株率を引上げたいと思っている。そのため損失が続いた場合の処理もさほど難しくない」とNinh氏は話している。
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(2010/04/02 09:18更新) |