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コラム |
ベトナム人が見た日本の相撲部屋
私たちが向かった境川部屋は都心から地下鉄を2本乗り継ぎ、そこからバスに乗り換え、さらに10分歩いた郊外にあった。力士が早起きして稽古することは知っていたが、早朝6時、気温13度という寒さの中で、すでに大勢の力士が裸で稽古に励んでいたのには驚いた。日本相撲協会の規定により、力士は気温に関係なく稽古の時はまわし姿でなければならないのだ。最近では、力士が土俵に上る際のまわしを見直すべきとの提案もあったそうだが、まわしは相撲の伝統であり、体の大きい力士が向かい合う時に姿勢を取り易い形状であるという理由で角界の反対を受け却下されたという。
稽古部屋に入ると、力士たちは私たちに礼儀正しく頭を下げ、すぐに稽古に戻る。部屋はわずか20m2だが、そこで20人近くの力士が四股を踏み、摺り足をし、汗を流す。部屋の中央では2人の力士が真剣に組み合っている。体の大きいこの若者たちは、態度も大きいに違いない、と考えていたが、力士たちは稽古中、ほぼ無言で何かを指摘する声も小さく、ただドスンッと大きな体が地面に打ち付けられる音だけが響く。
部屋で一番年下の力士、タカクニに話を聞いた。彼は2年前、16歳で部屋入りした。体重は当時91kgしかなかったが、その後の稽古で170kgにまで伸ばした。彼は毎朝5時に起床して稽古部屋を掃除し、着替えを済ませてから基本的な稽古を9時まで続ける。新入りである彼は、稽古の時には先輩力士の汗拭きや水汲みなどもする。これに耐えかね、相撲を辞め他の職業に就く人も多いという。
境川部屋は力士の稽古や生活上の便宜を考えて設計されている。1階には稽古場のほかに台所や食堂、共同スペースがある。力士はどのような食事をしてあのような大きな体になるのかが気になり、台所に潜入した。200kgはあるだろうという体格で、引退したのか髪を短く切った男性が、忙しく食事の支度をしており、タカクニも先輩たちに料理の配ぜんをしていた。
昼食には数十種類の料理が並び、目を引いたのが牛肉や玉ねぎ、豆腐などが巨大な鍋で煮込まれているスープだ。これは日本の伝統料理で、力士のメニューには欠かせない。料理担当のある力士によると、ここにいる力士17人分のスープを作るには、良質な牛肉が最低でも5kg必要という。
小林師匠に力士と一緒に食事をするよう勧められ、空腹だったもののご飯を丼1杯と魚を少し食べただけで満腹になった。隣に座っていた力士、岩木山は私が食べるのを見て、「たくさん食べて稽古に耐えられる体重を維持するのも大切な事で、それができなきゃ力士にはなれないよ!」と言う。180kgを超える岩木山は、一度の食事に最低でもご飯を丼4杯、スープ2杯のほかにおかずも食べ、食後に果物も食べる。食事は1日に朝稽古の後と夕方の2回あるが、食欲旺盛な力士たちはそれでも食べ足りず、タカクニはほとんど毎晩インスタントラーメンか弁当を食べ、食べなかった翌朝は体がだるく感じると言う。相撲では、食事もひとつの特訓なのだ。
相撲は世界的にも最も古い武芸のひとつで、1,500年以上前に始まったという。元来は農民が行う豊作祈願の祭りの一つであり、同時にその年の収穫を予想した。9世紀に入り宮廷の儀式に取り入れられ、12世紀には多数の技が加わり、江戸時代には各神社で祭りの際に催された。明治時代後期になって相撲は日本の国技と呼ばれるようになり、現在に至る。
部屋入りの条件は年齢15〜23歳、身長173cm以上で体重は最低でも75kg以上。さらに中卒以上という学歴制限もある。部屋に入門すると、力士たちにかかる食費や家賃など主な経費は日本相撲協会を通した各企業からの寄付金で賄われる。正式に取り組みを始めるようになると、協会から給料が月に6万〜20万円支払われ、その他勝つごとに100万〜150万円という多額の賞金を受け取る。そのためほとんどの力士の暮らし向きは良く、裕福である上に綺麗な妻がいる。境川部屋で岩木山は最も高学歴で、大学では経済学を専攻していたが、卒業時に相撲の道を選ぶことにした。6〜7年の相撲歴の中で、岩木山は境川部屋を代表する力士となり、最近の場所では勝利を多数収めている。
この伝統武芸は日本人だけの競技だったが、規制が緩和され外国人も参加が可能になり、その後ハワイやモンゴル出身力士が相撲で最高位の横綱に昇進、これが相撲を世界へ広めるきっかけとなった。
小林師匠によると、日本全国には部屋が50以上あり力士は850人を数え、モンゴルや中国、韓国、アメリカ、ロシアなど各国からの外国人力士は60人に上るという。別れ際に彼は、ベトナムへ行ったことはないがベトナムの映画を見たり、フォーを食べたりしたことがあり、もしベトナムで相撲を学びたいという若者がいれば喜んで特訓すると話した。
(Tuoi Tre)
(2006/07/05 10:09更新) |
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