ベトナム人の「タンス預金」
外国に行くと、ベトナムとは全く異なり、家に大量の現金を保管している人など誰もいないことに気づく。皆が銀行に口座を持ち、ATMカードやクレジットカードと多少の小銭を財布に入れて持ち歩いており、たとえ運悪くスリにあったとしても大したことはない。銀行に預金された国民の財産が企業の経営活動に貢献し、それによって国の経済は活性化し結果として国民が幸せになるという好循環を生むのである。
それなのに、なぜベトナム人は自国の銀行システムに対する信頼がこれほどまでに薄いのだろうか。大部分のベトナム人は未だにインフレの悪夢から逃れられず、「タンス貯金」をしているか、もしくはベトナムドンを全て金やドルに替えてしまっている。ベトナムが貧しい原因は、お金が足りないことだけではなく国の金回りが悪いことにあるのではないか。大量のお金が流通せずに各家庭に“無利子”で眠っており、結局皆が損をするのだ。
ベトナムの金融システムの発展は遅々として進んでおらず、貧困から抜け出せずにいる。このような状態ではいつまでたっても「外国からの援助額が昨年より増加」といって喜ぶしかないだろう。
1970年代に入るとアジアのNIES(新興工業経済地域)では、政府と銀行が協力し国民の預金を奨励する政策を打ち出した。これらの国では、国民は幼い頃から銀行の仕組みについて教育を受け、成人した頃には「銀行に貯金する」ことに誰も疑問を抱かないのである。一方ベトナムはというと、財政学部の大学生100人を相手に「銀行に口座を持っているか」と尋ねたところ、わずか2、3人が周りの様子を気にしながら恐る恐る手を挙げただけだった。銀行に口座をもっているだけで皆に「大金持ち」と思われ注目を浴びてしまうというのがベトナムだ。しかし財産の多い少ないは重要ではなく、国民にとって“銀行”が遠い存在であることが問題なのである。
ベトナム人は貧しいにも関わらず、もし銀行に預けてさえいれば得られるはずの金利をどぶに捨て、一方ベトナムの銀行も資金が不足しているというのに国民が預けに来た額が少ないと、馬鹿にして受け取ろうとしない。アジアNIES諸国も初めはベトナムと同様に貧しかったが、“塵も積もれば山となる”という教育が少しずつ国民に浸透していったのだ。仮に人口の半分(約4,000万人)が毎年わずか10万ドン(約6.7ドル)でも銀行に預金すれば、毎年銀行システムはその規模を4兆ドン(約2億7,000万ドル)ずつ拡大することができる。
ベトナムではインフレが沈静化してから5年以上経過し、為替レートも比較的安定してきている。金の価値が急変動しているのに対し、ベトナムドンの変動率は銀行の利率よりも低い水準だ。現在、銀行はカード業務や決算サービスの充実を図るなどの工夫を始めている。政府は国の発展を目指し債券の発行に力を入れているが、政府報告によると、依然としてかなりの額のお金が経済活動に貢献することなく各家庭に停滞している。この循環の悪さが、国の発展にとって致命的となる資金不足を招いているのだ。
(Tuoi Tre)
(2005/05/28 11:30更新) |