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投資・進出

ベトナムの投資状況 - 政策研究大学院大学 大野教授 -

 ベトナム計画投資省外国投資プロジェクト管理室によると2004年初から12月20日までで日本からの新規外国直接投資(FDI)は57件、登録投資総額は2億2,200万ドルに上る。これは台湾、韓国に次いで第3位だ。
 また、現在日本の投資家による増資プロジェクトも伸びており、その数は59件、総額5億5,700万ドルに達した。なかでもNghi Sonセメント工場の投資額が最大で2億4,800万ドルとなっている。現在日本からの有効なFDI件数は累計で486件、投資総額54億ドルに上る。
 日本からの投資拡大に一層弾みをつけるべくベトナム側は何をなすべきなのか? ベトナムの投資環境に詳しく、国際協力機構(JICA)との関りも深い大野健一教授に話を聞いた。


Q: 日越投資協定が発効し、ベトナムは日本からの投資ブーム再来を期待しています。その可能性に関してどのようにお考えでしょうか?

A: 日本貿易振興機構(JETRO)もホーチミン市内での会議の席上、日本からの投資ブーム再来について触れました。しかし実態は小企業による小規模な投資にとどまっています。期待が集まった2003年以降の日越共同イニシアチブにしても、Fujitsu社やCanon社など大企業の投資誘致は困難でしょう。事実このイニシアチブは、投資誘致を直接的に目指すものというよりは、日本企業から寄せられた投資の障害などをベトナム側に提示するための、いわば問題発見・解決に向けたプロセスに過ぎないのです。
 現在、日本政府は企業が抱える問題の解決はもちろん、ベトナムのさらなる工業化に向け支援する方針です。関税手続の簡略化など部分的ではない、総体的なベトナムの飛躍を願っているのです。


Q: 2004年11月にハノイで開かれた「ベトナムの核となる工業分野は」をテーマとしたシンポジウムで指摘された問題と絡めてのお言葉ととってよろしいでしょうか。

A: はい。ベトナムは工業化へ向けて総体的な目標を打ち立てる必要があります。これはベトナムにとって非常に重要な問題でしょう。工業立国を目指し2010年、さらに2020年までに何をすべきか国際社会にアピールしなければなりません。
 工業化の過程でどの分野を核にしていくのかという問題に関して、ベトナムは国家として積極的な姿勢を打ち出しています。しかし一方で個人的には、ベトナムの人々が市場経済導入の流れの中で工業化実現の方法を学び取っているかどうか疑問に感じています。先日のシンポジウムでは、年間目標や輸出目標を数字で決める、いわゆる“定量”方式にこだわる人の多さに改めて驚きました。そこにはいまだに計画経済のスタイルが居座っているのです。また分野別の目標設定はすでに時代遅れです。


Q: 投資関連の省庁幹部と議論されることも多いと存じますが、彼らの意識改革は進んでいると思われますか?

A: 計画投資省、工業省、商務省、財政省の一部の幹部は日本や韓国企業が訴える現状に耳を傾けてくれるようになったと思います。とはいえ大多数が保守的であることには変わりありません。改革派の人間が、同僚や上司の反対に遭い落胆することも珍しくないようです。


Q: ベトナムが今後発展させるべき分野として、ハイテクが挙げられると思うのですが、近いうちに日本のハイテク関連企業が進出することはあるのでしょうか?

A: ある研究会で、ベトナムはハイテク分野に関心を寄せているとの発言がありました。ではお尋ねしますが、コンピュータは単純にハイテク分野の産物だと断言できるのでしょうか? 例を挙げましょう。先日コンピュータを買うためにLy Nam De通りに行きました。私は必要な条件を聞かれただけで、20分ほどで希望通りのコンピュータを組み立ててくれました。このように簡単に組立可能なものを一概にハイテクと呼べるでしょうか? エビ冷凍加工は一見ハイテクとは対極にあるように見えるかもしれません。しかしこの分野でこそハイテクが要求されるのです。日本やEU、アメリカに輸出するなら、ハイレベルの品質管理が要求されます。衛生状態はもちろん、冷凍輸送して消費者の手元に届くまで“品質”の維持が求められます。これはハイテク抜きには不可能です。コンピュータならハイテクで、エビ冷凍加工はローテクだという単純な分類は誤りだといえます。
 シャツなどの簡単な縫製製品にしても、ベトナムは中国、バングラデシュ、カンボジアといった国々より優れたシステムを確立できるでしょう。これらの国では衣料品輸出が盛んですが、商品は安価なものがほとんどです。彼らと同じ土俵で競争するよりも、高級志向の市場に参入を図るべきです。自国内でのデザイン・生産はもとより、品質管理システムを確立し、高品質の原材料を確保するため香港にある品質管理センターと提携の上、香港、韓国、日本などの顧客企業とコンタクトを取り、納品期日は厳守する。これこそハイテクと言えるのです。
 日本人の多くはすべての商品がハイテクの産物と考えています。自国で生産したインスタントラーメンや良質の衣料品が世界のブランドとして不動の地位を得た事実を誇りに思っています。一方、ベトナムの人々は手先の器用さで世界的に知られていますが、自国で生産された衣料品に誇りを持っている人がどれだけいるでしょう? こういった意識の持ち方にも問題があるのではと思っています。IT分野でいえば日本人はMicrosoft社やIntel社が占める市場に敢えて参入しようとはしません。同様に、ベトナムは水産分野にさらに力を注ぎ、世界第1位となることで利益を得ればよいのです。


Q: 投資に話を戻しましょう。どのようにすれば、日本からの大規模投資を誘致できるのでしょうか?

A: ベトナム政府はPRにもっと力を入れるべきです。意見交換や情報収集の場でしかなかった会議や研究会に、投資家の関心も呼べるような具体性を盛り込んでいく必要があると思います。「日本から大規模投資を誘致したいが、コンタクト方法がわからない」などと直接呼びかけるのもいいでしょう。加えて「2010年までにベトナムは日本からの投資額でトップに立つ」といったより明確な構想を掲げてもいいと思います。この種の構想は各省庁ではなく影響力の強い首相が提唱すべきでしょう。そして一旦掲げた構想は以後5年間の計画の中心に据えなければなりません。政府は投資に対して現実的な意識を持っていると投資家にアピールするのです。何より投資家の心理をくすぐるような構想であることが不可欠です。
 交通インフラは格段に改善されましたが、法体制がどの程度改善されたかを知る人は外部には少ないでしょう。こういったことも広くPRしなければなりません。ベトナムは他国に比べて飛躍的な進歩を遂げていますが、それを投資家に伝えきれていないようです。
 ベトナムはこの種のPR活動を日本に対してだけでなく、米国やEU、韓国、台湾などにも行うべきです。初期投資を惜しんではいけません。他国から投資を誘致する際には、相手国の広告代理店を起用してもいいでしょう。広告代理店が持つ効率の良いノウハウに学べばいずれ自国だけでPRも可能になるはずです。

(Thoi Bao Kinh Te Sai Gon)


(2005/01/24 10:11更新)

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