ベトナムのブランドマニアたち
腰を突き出し、ジーンズに貼られたブランドロゴを強調しながら最新モデルのバイクを乗り回す女の子たちや、若いとは言い難いご婦人方がシースルーの上着に派手な下着を付けているのを最近よく目にする。彼らは自分が高価なものを身に付けていることをアピールしたいのだ。MTV、Paradiseのような有名なバーやViet’s Top、 Windows、Chot Nho、Highland Diamondなどの高級カフェに集まる遊び人たちは、自分が身につけているブランド品のデザイン、色などを披露し合う。
MTVで20歳くらいの女の子を見かけた。パープルピンクのハイライトを入れた髪にGiorgio Armaniのスカートで、自分の服装にかなり満足気だ。その隣に座っている若者もGuessのロゴが入ったTシャツにDKNYのだぼだぼパンツというヒップホップ系ファッションでひけをとらない。別のテーブルでは、30代後半の女性がArmani Exchangeのロゴが大きくデザインされた極端に丈の短いTシャツに、Tommy特有の青いチェックのスカートという少々年齢にそぐわない格好をしている。
最近のブランド品は以前より高価なものが増えている。ブランドマニアのLan Hanhさんは、「1着2,300ドルもするVictoria’s Secretの下着を買うのは、もちろん見せて自慢するためですよ」と屈託もなく話す。ブランド品を身につけているということはセンスの良さを演出するだけでなく、その人自身の品格も高いと見なされるという。本物か偽物かを見分けられる人は少ないのだが、ブランドマニアはcK 、Versace、Tommyといったブランドロゴに惜しみなくお金を費やす。
ブランドマニアは有名ブランドの服やアクセサリーを身に付けるだけでなく、美しく・稀少で・高価という3つの条件をクリアした商品で他人より目立とうとする。その好例がMinh Haiという若者だ。カシオのG-ShockやBaby G、SwatchのPopやSkinなどの時計が流行していた頃に、高価なTissotのT-Win(約400ドル)を買い見せびらかした。仲間のHoang Tuanは自慢され、悔しくなりTissotのT-Touch(500ドル以上)をすぐさま手に入れ、「これは友達がスイス旅行で買ってくれたものだから国内では手に入らないぜ」と見返した。2人の勝負はその後も続いた。Tuanの恋人がゴールドとプラチナでできた時計をしているのを見て、Haiは躊躇することなく自分の恋人に、2,000ドル以上するダイヤモンドを埋め込んだセラミック製の時計を買い与えたのだ。
若者だけでなく、財力のある中年男性もブランド品収集に夢中になるようだ。しかも彼らは、ブランドマニアの若者たちを打ち負かしてやろうという傾向がある。この年齢層はなかなか気難しいのだが、気に入った物にはためらわずに大金を使う。会社社長H.N.D(47歳)のお気に入りはValentino、Pierre Cardin、Givenchy、Giordanoなどのシャツで、時計はOmegaを愛用している。彼は、「若者たちはやみくもにブランドを漁っているようですが、私のような年齢層は本当にいいものを買うだけですよ」と少々自慢気に話す。あるアパレルメーカーのデザイナーをしているHoang DoanhさんはEliteやElleの服が大好きで、時計はLongines、Movado、Rolexを好んでつける。このような有名ブランドの時計は少なくとも2,000ドル以上する。
しかしやはりブランドマニアの多くは若者である。Lan Naという女性は、Gucciの靴を履き、Louis Vuittonのバッグを持ち、Banana Republicの香りを漂わせている。彼女は裕福な家庭の娘で、高価なブランド品を日常的に購入している。しかし誰もが彼女のように好きなだけお金を使えるわけではない。
広告会社勤務のBao Tramさんは自他ともに認めるLevi’s崇拝者だ。彼女は食費を削り、寝る間を惜しんでLevi’s集めに奔走する。新しい商品が入荷されたと聞くと、たとえどんなに遠くても飛んでゆく。Ly Tu Trong通りにある店で見つけたニューモデルのLevi’s517ジーンズを買うため、1カ月間必死で働いた。彼女は、「Levi’sは私の生きがいです」と公言する。
ホーチミン市のあるバーで働くPhi Longさんは、様々なブランドの稀少品コレクターとして知られている。彼はレア物しか身に付けない。数カ月に1度はシンガポール、タイ、香港などに飛び、その都度たった2、3着のために1,000ドル以上を費やす。給料だけでは足りずに、今まで住んでいた家から小さい貸部屋に引っ越したほどだ。彼にとっては、「俺と同じ物を着ている奴には今まで会ったことがないぜ」と自慢することが生きがいなのだ。
老若を問わずブランドマニアの世界に入ったら抜け出せなくなる。しかし頭ではわかっていながら足を踏み入れてしまうのだ。コンピューター関係の専門家Hoang VuongさんはD&Gのブランドを集めることに夢中になっている。これまでD&Gの服、眼鏡、ベルトなど総勢100点以上を集めた。ある日インターネットショッピングで、ストーンの装飾が施されたD&Gのジーンズを見た瞬間、反射的に注文のボタンをクリックしていた。商品が届いてから初めて銀行口座をチェックし、商品代800ドルと送料40ドルが引き落とされていることを知った。実はその口座は仕事用のもので、引き落とされたのは会社のお金だった。彼は埋め合わせのため友人から借金し、数カ月間不自由な生活を強いられた。
無職にも関らずブランドマニアの真似をして、その上誰にも負けたくないと競争心を燃やす人も少なくない。収入のない彼らは借金に苦しむことになるが、それでもブランドさえ身に付ければ世間から注目されると勘違いしてのめり込んでしまう。外見を美しく着飾ることを真っ向から否定することはできないが、中には行き過ぎて奇妙な格好になったり、ブランドでしか人や物事を判断できなくなったりする。ところで、あなたや周りの人たちは大丈夫ですか?
(Sai Gon Giai Phong)
(2004/12/20 10:30更新) |